「セレンディップの3人の王子」のあらすじを解説

「セレンディップの3人の王子」のあらすじを詳しく解説します。

セレンディップの3人の王子について

ペルシアのおとぎ話「セレンディップの3人の王子」は、M・クリストフォロアルメーノがペルシア語からイタリア語に翻訳して、16世紀にイタリアのヴェニスで初めて出版されました。

セレンディップの三人の王子たち
出典:kaiseisha.co.jp

「探してもいなかったものを偶然に発見すること」を意味する「セレンディピティ」の語源は、このおとぎ話からきています。

セレンディップの3人の王子の「セレンディップ」とは

「セレンディップの3人の王子」の「セレンディップ」とは、スリランカの古い名称を指します。

スリランカの伝説では、建国者の家系がライオン(シーハ)の血をひくため、その子孫たちが自分たちを「シンハラ」と呼んだことに由来します。

そこから、シンハラディーバ(シンハラの住む島)という島の名前が生まれ、アラビア人がその島を「セレンディップ」と訛って読んだことがきっかけになりました。

セレンディップの3人の王子のあらすじ

ここからは、「セレンディップの3人の王子」の中で最も有名な『消えたラクダ』のエピソードについて解説します。


むかし、東方の国セレンディップに「ジャッフェル」という偉大な王がいました。

ジャッフェルには3人の王子がおり、3人をとても愛していました。いずれは自分の跡継ぎにふさわしい人物になってほしいと願い、国内でもっとも優れた賢人を王子たちの教師にしました。

王子たちは、教師に負けない熱心さで勉強し、たちまち道徳、政治、その他一般の教養にも通ずるようになりました。

ジャッフェルは王子たちの成長を嬉しく思いましたが、さらなる成長を見届けるため、王子たちに世界中を旅させることにしました。

故国セレンディップを離れた王子たちは、ベーラム皇帝の国を目指すことにしました。

その道中で、ラクダの群れを連れた(※)キャラバンに出会います。

(※)キャラバンとは、砂漠の中を旅して、公益を行う商人の一団のことを指します。

一頭のラクダを見失っていたキャラバンの隊長は、王子たちにラクダを見なかったか尋ねます。

王子たちは、途中でそれらしき動物の足跡を見たことや、街道の様子を思い返して、

  • ラクダは片目が見えなかったこと
  • ラクダは歯が1本抜けていたこと
  • ラクダは足が不自由だったこと
  • ラクダは片側の背にバターを、もう一方の背にハチミツを積んでいたこと
  • ラクダにはご婦人が乗っていて、そのご婦人は身ごもっていたこと

を言い当てました。

見失ったラクダの特徴をあまりにも正確に言い当てたことから、キャラバンの隊長は、王子たちがラクダを盗んだと勘違いをしてしまいました。

ベーラム皇帝の国に着くと、王子たちはキャラバンの隊長に窃盗の容疑で訴えられました。

牢獄に入れられた王子たちですが、キャラバンの仲間のひとりが街道で見失ったラクダを発見したことで、無実が判明しました。

事件のいきさつを聞いたベーラム皇帝は、すぐに王子たちを釈放しました。

ベーラム皇帝は、王子たちが見たこともないラクダの特徴を、何故正確に言い表すことができたのかを尋ねました。

「ラクダは片目が見えなかったこと」を言い当てた理由

王子たちは、歩いてきた道沿いで、よく生えた側の草がまったく食べられておらず、もう一方のよく生えていない側の草だけが食べられていたことを発見していました。

もし片目が欠けていなかったら、ラクダは草がよく生えているほうを選び、あまり生えていないほうを選ぶことはなかっただろうと考えて、『ラクダは片目が見えなかったこと』を言い当てたのです。

「ラクダは歯が1本抜けていたこと」を言い当てた理由

王子たちは、道沿いの草がほとんど一足ごとに、ラクダの歯ほぼ一本分の大きさだけ食べ残されていたことを発見していたことから、「ラクダは歯が1本抜けていたこと」を言い当てたのです。

「ラクダは足が不自由だったこと」を言い当てた理由

王子たちは、道沿いの地面に残された足跡を発見しており、その足跡から一本の足を引きずっていた様子が伺えたことから、「ラクダは足が不自由だったこと」を言い当てたのです。

「ラクダは片側の背にバターを、もう一方の背にハチミツを積んでいたこと」を言い当てた理由

道沿いの右側にはバターを探すたくさんのアリがいて、そして左側にはハチミツを好むたくさんの虫が飛んでいたのを発見していたことから、「ラクダは片側の背にバターを、もう一方の背にハチミツを積んでいたこと」を言い当てたのです。

「ラクダにはご婦人が乗っていて、ご婦人は身ごもっていたこと」を言い当てた理由

王子たちは、ラクダが座ったとおぼしき場所に、ご婦人の履く靴の跡と小さな水たまりがあり、その傍に、地面に押しつけられた手のひらの跡を発見していました。

ご婦人がここで用をすませた後、身ごもった体の重さを支えるために地面に手をついたと考え、「ラクダにはご婦人が乗っていて、ご婦人は身ごもっていたこと」を言い当てたのです。

セレンディップの3人の王子に学ぶこと

おとぎ話「セレンディップの3人の王子」は、旅の途中で様々な出来事に遭遇した王子たちが、並外れた洞察力によって、もともと探すはずのなかった有益な何かを偶然に発見していく物語です。

この物語のテーマはまさに、

偶然と才気によって、もともと探すはずのなかった有益な何かを発見することの大切さ

この一点に尽きるように思います。

この世の中には、「セレンディップの3人の王子」と同じような体験をした人たちが大勢います。

ある科学者が別の研究をしていた時、もともと探すはずのなかった大発見をしたり、開発が失敗に終わった未完成品から、偶然にも新しい商品価値を発見して、大ヒットしたり・・・。

そんな素敵な偶然は、わたしたちの日常にも溢れています。

「セレンディップの3人の王子」は、そうした偶然に気づくよう、わたしたちに教えてくれているような気がしてなりません。

[参考書籍]

竹内慶夫編訳 「セレンディップと三人の王子たち~ペルシアのおとぎ話~」<偕成社文庫>