ザ・ビートルズの歴史的名曲「イエスタデイ」誕生秘話

ここでは、世界的なロックグループ、ザ・ビートルズの歴史的名曲「イエスタデイ」の誕生秘話について解説します。

ザ・ビートルズとイエスタデイ(Ⅰ)-夢の中でひらめいたメロディ-

それは、1963年11月のある朝のことでした。

世界的に有名なロックグループ、ザ・ビートルズのメンバーであるポール・マッカートニー(ポール)は、夢の中でメロディをひらめきました。

ポール・マッカートニー
出典:www.universal-music.co.jp

それはあまりにも美しく、そしてはかないメロディーでした。

ポールは目を覚ますと、すぐさまピアノの前に座り、夢の中で聞いたメロディを再現しました。

そのメロディのコード進行は、

G - F♯m7 - B - Em - E

でした。

あまりにも出来過ぎたため、ポールは、既に聞いたことのあるメロディの一節に違いないと考えました。

それと同時に、もしこのメロディが盗作でなければ「今世紀最大のヒットになるかも知れない」と考えました。

ポールはこの時を回想して、「親父はジャズの曲をたくさん知っていたから、小さい頃に聴いた曲を思い出しただけかもしれないって思ったんだ」と答えています。

ポールは早速、友人たちのもとを回り、夢の中でひらめいたメロディに聞き覚えがあるかどうかを尋ねました。

その友人たちの中には、ザ・ビートルズで作曲を担当していたジョン・レノンをはじめ、ライオネル・バート、アルマ・コーガンといった豪華なメンツが含まれていました。

アルマ・コ―ガン
出典:Wikipedia

アルマ・コーガンが、そのメロディーはオリジナルだと答えたことで、ポールはようやく安堵しました。

ポールが安堵したことにも頷けます。

何故なら、彼が夢の中でひらめいたメロディこそ、ザ・ビートルズの代表曲「イエスタデイ」だったからです。

ザ・ビートルズ「イエスタデイ(1965)」

ザ・ビートルズとイエスタデイ(Ⅱ)-「イエスタデイ」誕生秘話-

ここまでの話を聞いて、「イエスタデイ」は一夜にして完成された奇跡の楽曲のように思い浮かべた人は多いと思います。

ポールが夢の中でメロディを思いついたことは、まさにひらめきの瞬間に間違いありません。

しかし、「イエスタデイ」は一夜にして完結した楽曲ではありませんでした。実際には、ポールが夢の中でメロディを思いついてからおよそ20ヵ月の間、楽曲の完成に没頭したといわれています。

ザ・ビートルズの主演映画「ヘルプ!四人はアイドル」の撮影が始まっても、ポールは相変わらず休憩中に曲を作り続けていました。

監督のリチャード・レスターはうんざりして、「その耳障りな歌をこれ以上演奏したら、ピアノを撤退させるぞ。さっさと完成させるか、諦めるか、どっちかにしてくれ!」と怒りをあらわにしました。

しかし、ポールの楽曲制作はまだまだ続きます。

映画の撮影後に始まったコンサートツアーでも、ホテルの部屋にピアノを設置して作曲を続けました。

1965年にようやく楽曲を完成させると、そこから歌詞を練り上げていきました。楽曲の完成からおよそ一か月後に、プロデューサーのジョージ・マーティンと共にスタジオに入り、ようやく完成に漕ぎつけました。

ザ・ビートルズとイエスタデイ(Ⅲ)-「イエスタデイ」の秘密-

天才のひらめきから生まれた伝説的な楽曲として、人々の記憶に残る「イエスタデイ」は、じつは二年近い長旅の結実であり、途方もない努力の賜物でした。

世界には、「イエスタデイ」の誕生に関する研究者が大勢存在していて、異口同音に様々な説を唱えています。

特に信憑性が高いものとして、ザ・ビートルズ研究の第一人者、イアン・ハモンドの唱えた説が有名です。

「イエスタデイ」は、レイ・チャールズがカバーした「我が心のジョージア」のメロディを、そのまま進化させたという説です。

レイ・チャールズ「我が心のジョージア(1960)」

ポールは、レイ・チャールズを尊敬していました。

ポールにとって、神がかり的なひらめきに思えたものは、彼がこれまで聞いてきたレイ・チャールズなどの音楽を無意識の中で処理した結果だったのでしょう。

新しいアイデアというのは、新しい場所におかれた古いアイデアなのです。

それを端的に示す例として、「イエスタデイ」作曲に関するポールのインタビュー内容をお伝えします。

「とてもスピリチュアルな見方をするなら、僕はただの媒体に過ぎず、神がメロディを僕に吹き込んでくれた、ということになるだろう。だが、もう少し皮肉な見方をするなら、僕はフレッド・アステアやガーシュウィンといった僕の好きな音楽家を通じて聴いてきた何百年分もの曲を、僕自身のコンピューターにせっせと蓄えていた。そして、とうとうある朝、僕のコンピューターが抜群の旋律を自動的にプリントアウトしてくれたわけだ。

文典:アレン・ガイット(著)「クリエイティブスイッチ」<早川書房>

[参考書籍]

1)アレン・ガイット(著)千葉敏生(訳)「クリエイティブスイッチ」<早川書房>

2)茂木健一郎「ひらめき脳」<新潮社>

3)Ian Hammond, Old Sweet Songs: In Search Of the Source I Saw Her Standing There and Yesterday, Soundscapes: Journal on Media Culture5, 2002

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