バスケットボール誕生の歴史

アメリカの国民的スポーツ、バスケットボールが誕生した歴史について解説します。

バスケットボールの歴史(Ⅰ)-バスケットボールの誕生-

1891年の冬、カナダのモントリオールにあるマギル大学を卒業したジェームズ・ネイスミス(ネイスミス)は、マサチューセッツ校に体育教師として赴任しました。

ところが、ネイスミスが受けもったクラスは素行の悪い生徒ばかりが集まっていました。

ジェームズ・ネイスミス(最後列の右端)
出典:Wikipedia

不良生徒たちの悪態に困り果てていた校長は、赴任したばかりのネイスミスに、短期間で生徒の規律を正すよう命じました。

ネイスミスは、不良生徒たちを改心させるには、スポーツしかないと考えました。

モントリオールでは、厳しい冬の間は屋外競技(とりわけ人気のアメリカンフットボール)ができないため、生徒たちのストレスが溜まる原因にもなっていました。

ネイスミスは、これまで行われていた体操中心のプログラムに代わり、ボールを使用した競技的要素のあるプログラムが好ましいと考えました。

そうした制約を逆手にとり、屋内競技で且つ、全ての生徒が熱中できるスポーツを考えるうちに、バスケットボールの原型となるスポーツをひらめきました。

フットボールの競技的要素をもちながら、ほどほどの場所と人数で楽しめるスリリングな屋内競技が誕生した瞬間でした。

バスケットボールの歴史(Ⅱ)-バスケット専用ボールの発明-

ネイスミスが考案した新しい競技を試してみたところ、生徒たちはたちまち夢中になりました。

バスケットボールの評判は他校にも広がり、やがて流行りの競技としてアメリカ全土に広がりました。

バスケットボールが脚光を浴びたことで、企業はこぞってバスケット用品の開発に取り組みました。現在ではお馴染みとなった、縫い目のあるバスケット専用ボールもその一つでした。

バスケット専用ボールは、ジョージ・L・ピアーズ(ピアーズ)によって考案され、スポルディング社が製作しました。

スポルディング社製バスケット専用ボール(発売当時)
出典: www.spalding.co.jp

従来のボールは、内側に貼られた補強パネルが両極に向かうにつれて細くなるため、競技を続けると、すぐに裂けてしまいました。

ピアーズは、補強材の形状を修正することで、ボールの強度を飛躍的に上げることに成功しました。そのユニークな縫い目によって、選手たちの心配事は見事に解消されたのです。

ピアーズは、バスケット専用ボールの開発当時を振り返り、次のように述べています。

「ゲーム中、ずっとドリブルしているわけだから、ボールはすぐにボロボロになって裂けてしまいます。激しいスポーツだから、耐久性が第一。見た目は二の次と思ったものです。そこで新作ボールは、外周に継ぎ当てを貼って破損を防止しました。微妙なカーブを描く複数の継ぎ当てをうまく組み合わせることにより、ボールの強度を数倍も上げることができたのです。得に両極部を包むように凹型にカットした継ぎ当てラインに工夫を凝らしました。それらを本体に縫い付けてカバーすることにより、耐久性に優れた長持ちするボールが誕生しました。」

文典:ベン・イケンソン著/村井理子訳「こうして特許製品は誕生した!」

バスケットボールの歴史(Ⅲ)-バスケットボールを発明できた理由-

ネイスミスが、バスケットボールという新しい競技を発明できたのは、三つの制約を活かせたからです。

一つ目は、不良生徒たちを改心させるため、安全かつ、チーム内で協力を必要とする競技を考案する必要がありました。

二つ目は、季節の影響から屋外競技が困難な環境にあり、屋内競技を考案する必要がありました。

三つ目は、不良生徒たちが、フットボールのような競技的要素のあるスポーツができないことにストレスを溜めていたため、競技的要素を取り入れる必要がありました。

そうした三つの制約のお陰で、屋内で競技にて、フットボールのような競技的要素を含みつつも、安全性を考慮した身体接触の少ない「バスケットボール」が誕生しました。

不良生徒たちを改心させるために考案されたスポーツは、今やアメリカ中が熱狂するプロバスケットボールリーグ、National Basketball Association(NBA)の誕生につながっていきました。

様々な制約を活かしきったことで、全米を熱狂させる新しい発明が生まれたのです。

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ベン・イケンソン(著)村井理子(訳)「こうして特許製品は誕生した!」<二見書房>