選択の理論と心理学~後悔しない選択とは~

後悔しない選択について

人生において、大きな選択を迫られる局面は何度となく訪れます。そうした局面でこそ、後悔しない選択をしたいものです。今回は、後悔しない選択について、心理学の知見をもとに解説します。

選択に関する研究

ダン・アリエリーとジョナサン・レバブがおこなった「選択」に関する研究をお話します。

研究は田舎町の流行っているパブでおこなわれ、パブに訪れた客を研究対象としました。

研究方法としては、2名以上の客が集うテーブルにウェイターが訪れ、店でビールの無料試飲をおこなっていることを告げ、客にメニューを見せました。

メニューには、地元の地ビールメーカーが出している4種類のビールの簡単な説明が書かれており、客一人ひとりが好きなビールを選ぶことができました。

  • 半数のテーブルでは、普通のレストランでやるように、ウェイターが一人ひとり順繰りに注文を聞いて回りました(条件A)。
  • 残り半数のテーブルでは、ウェイターが客にカードを配り、他の客と相談せずに、欲しいビールに印をつけて注文してもらいました(条件B)。

その後、各条件共に「選んだビールの満足度」について、アンケートを実施しました。

結果①-選択したビールの種類-

客がお互いの注文を聞いていた条件Aでは、注文したビールの種類が多い結果となりました(複数の客が、それぞれ違う種類のビールを注文した)。

他の客が注文したビールの種類を知らない条件Bでは、注文したビールの種類が少ない結果となりました(複数の客が、ほぼ同じ種類のビールを注文した)。

結果②-選択したビールの満足度-

客がお互いの注文を聞いていた条件Aのアンケートでは、それぞれ違う種類のビールを注文したにも関わらず、自分の注文したビールの満足度は低い結果となりました。多くの客が「違うビールにすればよかった」と回答しました。

他の客が注文したビールの種類を知らない条件Bのアンケートでは、同じテーブル内で他の客とほぼ同じ種類のビールを注文したにも関わらず、自分の注文したビールの満足度は高い結果となりました。

さらに驚くべきことに、条件Aにも、条件Bと同じくらい満足度の高い客が一人だけいました。

それは、ビールを最初に注文した客でした。

後悔しない選択とは、「自分が望むものを選択する」こと!

条件Aにおいて、最初に注文した客は、自分が本当に飲みたいものを選ぶことだけを考え、何にも束縛されずに自由に選択できたのです。これ対して、注文の順番が後の客は、選ぼうとしていたビールを先に注文されてしまったため、ジレンマに陥ったのです。

その結果、注文の順番が後の客は、他の客が選んだものと同じものは選びたくないという自尊心の誇示によって、自分の希望ではないビールを飲む羽目になりました。

つまり、他人の真似をしたくないという自尊心が、選択を誤らせたのです。

後悔しない選択とは、他人と同じものであろうと、「自分が望むものを選択する」ことが大切なのです。

選択の起源について

「自分が望むものを選択する」という欲求は、生得的なものであり、言葉で表現できない乳児期から存在することが明らかになっています。

生後4ヶ月の乳児を対象にした研究では、乳児の手に紐(ひも)を結わえつけ、紐を引っ張れば心地良い音楽が流れることを繰り返し提示しました。その後、紐を取り外し、代わりにランダムな間隔で音楽を流しました。

その結果、自分で音楽を鳴らしたときと同じ時間だけ音楽が聴こえたにも関わらず、乳児の表情は歪み、腹を立てたのです。

人間の脳に備わっている線条体と呼ばれるニューロンは、まったく同じ報酬であっても、受動的に与えられた報酬よりも、自分から能動的に選んだ報酬に、より大きな反応を示すことが明らかになっています。

つまり、乳児は単に音楽が聴きたかった訳ではなく、音楽を聴くかどうか、自ら選択することを渇望していたのです。

成長に伴い、他人との関わりの中で形成された自尊心によって、生得的に備わっている「自分が望むものを選択する」ことが妨害される可能性が高くなります。

また、自分自身は本意でなくとも、両親や親族から勧められた道を受動的に選択することも、同様の結果を生むでしょう。

忘れないでください。後悔しない選択は、「自分が望むものを選択する」ことです。

[参考書籍]

シーナ・アイエンガー(著)櫻井祐子(訳)『選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義』<文春文庫>

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